大型のモーターコア試作は難しい?
大型モーターコアの試作は、小型品より設備・精度・コストの壁が高くなります。難しい理由と主な工法、試作先の選び方を解説します。
大型モーターコアの試作が難しい理由
大型モーターコアの試作が難しい理由は、大きく4つあります。設備の大型化によるコスト増、加工機の範囲による制約、精度確保の難しさ、そして試作品と量産品の磁気特性の差です。
大型金型と大型プレスが必要になり、試作コストが跳ね上がる
最大の理由は、コアの外径に合わせて金型とプレス機も大きくなり、少量の試作でも大きな初期費用がかかることです。少量の試作品のためにプレス用の金型から起こすと、コストは割高になります。試作段階で金型を製作すると、コスト増に加えて開発期間も長くなります。
量産の現場でも、EV駆動モーターコア用のプレス金型は大型化しています。2025年には、加圧能力4,000kN(約400トン)、ボルスター寸法4,300×1,200mmで、上下型合わせて計14トンの金型を搭載できるモーターコア加工用プレス機が発売されました。
EV駆動モーターコアは、形状の複雑化や多列取りのニーズから量産用金型も大型化しており、こうした大がかりな設備が使われています。少量の試作のため同等の設備を用意するのは難しいというのが現状です。
参照元:ニュースイッチ by 日刊工業新聞社(https://newswitch.jp/p/46311)
加工機のテーブルサイズや加工範囲に制約がある
金型を使わない工法を選んでも、加工機のテーブルサイズや加工範囲によって、対応できる外径の上限が決まります。たとえばワイヤーカットでは、機械の制約で外径φ200mmが限界だったものが、新設備の導入によってφ260mmまで製作できるようになった例があります。
レーザー加工でも、□500×500mmのテーブルを持つ加工機の標準的な対応範囲はφ480mm程度という例があります。依頼の前に、試作したいコアの外径が加工先の設備で加工できる範囲に収まるかを確認する必要があります。
参照元:此木製作所(http://www.konoki-pad.com/motor/suggetion.html)
参照元:松山精機株式会社(https://www.matusei.jp/?page_id=875)
径が大きいほど真円度・同心度・積層精度の確保が難しい
数百枚の電磁鋼板を積層しながら高い真円度・同心度を保つ必要があることから、外径が大きくなるほど条件は厳しくなります。たとえば直径150〜250mmの電磁鋼板を200〜300枚積層する量産用モーターコアでも、真円度や同心度には20〜30μmという精度が求められます。検査工程はもちろん、その後の梱包や輸送にも技術が必要です。
積層した鋼板をワイヤ放電加工でまとめて切る場合も、手間がかかります。鋼板の隙間を均一にするためにボルトで固定し、切り落としたときの落下を防ぐ板を取り付けるといった工夫が必要です。積層した鋼板の隙間に加工粉がたまると、ワイヤの断線や加工速度の不安定化も起こります。
参照元:日本発条株式会社(https://nhkspg.co.jp/news/20220610_01)
参照元:大分県産業科学技術センター(https://antique.oita-ri.jp/wp-content/uploads/2015/05/2005_09.pdf)
試作工法と量産工法で磁気特性に差が出やすい
試作の工法と量産の工法が異なるため、磁気特性に差が出やすい点も課題です。電磁鋼板を打ち抜くと、鋼板端部に生じる塑性ひずみや弾性ひずみによって、透磁率の低下や鉄損の増加が起こります。
打ち抜き加工では、加工断面から約250〜300μmの範囲に硬度変化(残留応力ひずみ)が生じます。一方、ワイヤ放電加工では約30μm程度にとどまります。
そのため、ワイヤー加工の試作品とプレスで打ち抜く量産品では特性に差が生じ、試作の評価結果が量産品にそのまま当てはまらないことがあります。
参照元:JFEテクノリサーチ株式会社(https://www.jfe-tec.co.jp/download/pdf/3S4J-094-00.pdf)
参照元:大分県産業科学技術センター(https://antique.oita-ri.jp/wp-content/uploads/2015/05/2005_09.pdf)
参照元:松山精機株式会社(https://www.matusei.jp/?page_id=875)
大型モーターコアの試作で使われる主な工法
大型モーターコアの試作では、数量・精度・評価の目的に応じて、主に次の4つの工法が使い分けられます。
レーザー加工|金型不要で小ロット試作のコストを抑えやすい
レーザー加工は金型を作らずにコア形状を切り出せるため、少量の試作で費用を抑えやすい工法です。薄板の電磁鋼板でも、プレス加工品並みのコア特性と、ワイヤー加工品に近い精度で加工できる設備があります。
プレス金型を起こす前の形状確認として、少量から活用できます。
ワイヤー放電加工|切断面が良好で加工ひずみが小さい
ワイヤー放電加工は、切断面が良好で加工ひずみが小さい工法です。薄板を積層した状態で一気に加工できるため、積層時のズレも抑えられます。
レーザー加工より低ひずみで加工でき、高精度な試作に向いています。ただし数量が増える場合は、コストに合った別工法への切り替えも検討しましょう。
ノッチング加工|部分金型の繰り返し抜きで大径コアに対応
ノッチング加工は、主にスロット部など形状の一部分だけの金型を作り、割り出し盤で回しながら繰り返しプレスして全周を加工する方法です。金型代を抑えられるため、量産試作レベルの数量でトータルコストを下げやすくなります。Φ120〜約Φ950の中〜大型コアの製作に使われている例があります。
参照元:松山精機株式会社(https://www.matusei.jp/?page_id=875)
分割コア|分割して抜くことで金型・プレスを小型化できる
分割コアは、もともと量産で金型・プレス設備を抑えるために採用されている構造です。円環状のコアを複数に分けて打ち抜き、積層・溶接などで一体化する方法で、たとえば一体型のロータコアを90°で4分割すると、材料歩留まりが大幅に改善し、小型のプレスで生産できるため設備投資を抑えられます。
ただし溶接で組み立てる場合は、溶接ひずみによって鉄心精度が出にくいことがあります。組立方法の工夫が必要です。
参照元:日本発条株式会社(https://www.nhkspg.co.jp/products/motorcore/splittype)
参照元:三菱電機技報(https://www.giho.mitsubishielectric.co.jp/giho/pdf/2010/1012113.pdf)
大型モーターコアの試作に対応できるメーカーの選び方
大型品の試作先を選ぶときは、次の4つの観点で確認すると失敗を防げます。
対応できる外径・積厚と保有設備を確認する
まず、試作したいコアの外径・積厚に対応できる設備があるかを確認しましょう。レーザー加工機のテーブル寸法や、ノッチング・ワイヤー加工で対応できる径は加工先ごとに異なります。
ワイヤー放電加工機の導入によって大型品(Φ200mm以上)の新工法を確立した例のように、設備の更新で対応範囲が広がることもあります。問い合わせの際は、外径・内径・積厚・板厚を伝え、どの工法でどこまで対応できるかを具体的に確認してください。
参照元:此木製作所(http://www.konoki-pad.com/motor/suggetion.html)
複数の試作工法から最適な方法を提案できるか
試作工法にはそれぞれ一長一短があるため、複数の工法から適切な方法を提案できる加工先を選ぶと安心です。
形状の精度、希望価格、リードタイムに合わせて、レーザー加工・ノッチング加工・ワイヤー加工・プレス加工を使い分けて提案する加工先があります
量産を見据えた工法・金型の提案ができるか
試作の評価を量産につなげるには、量産を見据えた提案ができるかも重要です。自社製金型によるプレス加工で、まとまったロット数の量産試作に対応する加工先もあります。
生産台数が少なく多品種になりやすい中大型モーターでは、生産規模に応じて設備投資や工数を最適化することがコスト競争力の強化につながるとされています。簡易な組立で十分な精度が得られるコア構造は、試作の容易化にもつながります。
大型品の精度を検証できる測定・品質管理体制があるか
大型品は精度が出にくいため、精度を検証できる体制も確認しましょう。真円度・円筒形状測定機を導入し、提供できる測定データを増やしている加工先があります。
真円度・同心度20〜30μmが求められる製品では、検査工程の技術も欠かせません。
参照元:此木製作所(http://www.konoki-pad.com/motor/suggetion.html)
参照元:日本発条株式会社(https://nhkspg.co.jp/news/20220610_01)
まとめ
大型モーターコアの試作には、4つの壁があります。金型・プレスの大型化によるコスト増、加工機の範囲の制約、精度確保の難しさ、試作品と量産品の磁気特性の差です。
レーザー・ワイヤー・ノッチング・分割コアの特徴を理解したうえで、対応外径と設備、工法の提案力、量産を見据えた提案力、測定体制の4点を確認し、目的に合った試作先を選びましょう。
モーターコアメーカー
おすすめ3選
「小ロットで依頼したら断られた…」という会社のために、小ロット試作から量産まで対応しているモーターコアメーカーを厳選。なお、品質担保の観点から、国際的な品質マネジメント規格「ISO9001」取得済みの、信頼できる会社のみをピックアップしています。
コストや個数に応じて
適切な加工法を提案する
- 4つの積層方法から、求められるコストや個数に応じて加工
- 量産要望にも、工数を減らす金型でコストダウンへつなげる
- 主な用途
- 自動車/電気製品/ロボットなど
モーターの効率化に繋がる
難加工素材に対応する
- 加工が難しいアモルファスやパーメンジュールに対応
- 特殊鋼素材の調達ネットワークで用途に合わせた素材を調達
- 主な用途
- 航空機/モータースポーツ/医療機器など
豊富な設備を取り揃え
大型のモーターコアを製作する
- 外径1,300㎜までのモーターコアにも対応
- 顧客の要望に応えるため、新たな設備を積極的に導入
- 主な用途
- 自動車/電気製品/ロボットなど
※選定基準:Google検索で、「モーターコア」及び「積層コア」と検索した際に表示される31社を調査(2022年4月11日調査時点)。その中から、下記の基準に沿って選出しています。
- 飯島精機…ISO9001を取得していてかつ試作品対応の会社の中で、コストや個数に合わせて選択できる加工方法が最も豊富(4種類)
- 守谷刃物研究所…ISO9001を取得していてかつ試作品対応の会社の中で、アモルファスとパーメンジュールの加工事例の掲載が最も多い
- 城山産業…ISO9001を取得していてかつ試作品対応の会社の中で、最も大きな外径の製品まで対応してくれる
