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鉄芯道場 ~縁の下の力持ち、モーターコアで拓く未来~/モーターコアの基本/【基礎知識】モーターコアの残留応力・応力緩和について

【基礎知識】モーターコアの残留応力・応力緩和について

モーターコアの残留応力は鉄損を増やし、モーター効率を下げます。本記事では発生源と応力緩和の対策を、設計目線で整理します。

モーターコアの「応力緩和」とは?残留応力がなぜ問題になるのか

モーターコアの応力緩和とは、打ち抜きや積層などの製造工程で電磁鋼板に生じた残留応力(加工ひずみ)を除去・低減し、コア本来の磁気特性を回復させる取り組みを指します。

鉄心の各部に応力が加わると材料の磁気特性にひずみが生じて損失が増えるため、応力を緩和させることが重要です。鉄損はモーターの効率に直結する損失であり、設計担当者にとって残留応力への対策は、効率向上を左右する重要なテーマといえます。

残留応力が鉄損を増やすしくみ

残留応力・加工ひずみによる磁気特性の劣化

電磁鋼板に残留応力や加工ひずみが加わると、磁区の動きが妨げられて磁化しにくくなり、同じ磁束を得るためのエネルギーが増えて鉄損が増加します。

反対に、加工ひずみが入った結晶組織を焼鈍によって再結晶させると、ひずみが解放されて磁気特性が回復します。これが残留応力の管理が鉄損低減につながる理由です。

モーターコアに残留応力が生じる主な原因

打ち抜き(せん断)加工によるひずみ

最初の発生源が、電磁鋼板をプレス型で所定の形状に打ち抜くせん断加工です。切断面の近傍には塑性ひずみが残り、その影響は加工端部から板厚と同程度の幅まで及ぶとされています。

打ち抜きはすべての積層コアが通る工程であり、鉄損増加の基礎的な要因となります。

カシメ(ダボ)締結による応力

カシメは、打ち抜いた鋼板にダボと呼ぶ突起を設け、ダボ同士を勘合して積層鉄心を一体化する、低コストで量産性に優れた締結方法です。

ただし、ダボの形成と勘合で導入されるひずみは、場合によっては打ち抜きひずみを上回るほど磁気特性を劣化させることもあります。またカシメ部で積層鋼板同士が短絡すると、渦電流の閉回路が形成されて鉄損が増える点にも注意が必要です。

レーザー溶接による熱応力

積層した鋼板の背面を溶接して固定する方法も、コアに応力を与えます。溶接によってコアの応力が増加し鉄損が増える場合も考えられるのです。

一方で、レーザー溶接は細いビード幅で深く溶け込むため、一般的なTIG溶接に比べて熱影響による歪みや変形が小さい点が特徴です。溶接工法の選び方によって、熱応力の大きさは変わってきます。

圧入・焼きばめ(しめしろ)による応力

完成したコアをフレームへ圧入・焼きばめする際の「しめしろ」も、応力の発生源になります。締め代が大きいとコアが変形し、磁気特性がひずんで鉄損が増加します。

富士電機技報では、コアとフレームのしめしろを小さく見直すことでコアの変形を最小限に抑え、損失の増加を防いだ事例が紹介されています。設計の際は締結後の応力まで含めることも必要です。

参照元:富士電機技報「プレミアム効率モータの損失低減技術」(https://www.fujielectric.co.jp/about/company/gihou_2015/pdf/88-01/FEJ-88-01-0036-2015a.pdf

モーターコアの残留応力を緩和する対策

応力除去焼鈍(歪取焼鈍)で加工ひずみを除去する

最も基本的な対策が、応力除去焼鈍(歪取焼鈍)です。溶接や冷間加工などで生じた残留応力は加熱によって除去でき、加熱後は熱応力を避けるため徐冷します。

日本製鉄では無方向性電磁鋼帯のカタログで応力除去焼きなましを標準項目として掲げており、電磁鋼板メーカーの標準的な工程となっています。ただし歪取焼鈍で打ち抜きなどの塑性ひずみは除去できても、カシメの締結応力は残存する場合があり、焼鈍だけに頼らない設計が求められます。

引用元:日本製鉄「無方向性電磁鋼帯」(https://www.nipponsteel.com/product/sheet/list/20.html

接着積層など応力の少ない固定・積層方法を選ぶ

締結そのものを、応力の少ない方法へ変えるのも有効です。鋼板同士を接着剤で固定する接着積層は、カシメや溶接に比べてコストは高いものの、鉄損が少なくモータ特性が向上します。

締結方式の選定は、残留応力を根本から抑えるための設計判断といえます。

加工法・設計での配慮

加工法と設計の工夫で応力の発生自体を抑えることも可能です。溶接が避けられない場合でも、熱影響による歪みが少ないレーザー溶接を選び、接着積層と併用する方法もあります。

また、フレームとのしめしろを最適化し、打ち抜きひずみを取る工程を組み込むことも効果的といえます。発生源ごとに対策を組み合わせ、コア全体で残留応力を管理する視点が重要です。

まとめ

モーターコアの応力緩和は、打ち抜き・カシメ・溶接・圧入といった発生源ごとに残留応力の性質を理解し、鉄損への影響を抑える取り組みです。

応力除去焼鈍で加工ひずみを除去しつつ、焼鈍では取り切れない締結応力には、接着積層やしめしろ最適化で対応します。発生源の切り分けと対策の組み合わせこそが、モーター効率を高める設計の近道となります。

 
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