鉄芯道場
~縁の下の力持ち、モーターコアで拓く未来~
鉄芯道場 ~縁の下の力持ち、モーターコアで拓く未来~/モーターコアの基本/モーターコアの「試作と量産で工法が変わる」問題とは

モーターコアの「試作と量産で工法が変わる」問題とは

モーターコアは試作と量産で工法が変わると特性が乖離しがちです。試作〜量産一貫メーカーを見極める工法の理解と、依頼時のチェックポイントを実務目線で整理します。

モーターコアの「試作と量産で工法が変わる」問題とは

モーターコアの新製品開発では、少量製作の試作にレーザー加工・ワイヤー加工・エッチング加工などが選ばれることが多く、一方で量産は順送や単発のプレス金型が主流となります。

しかし工法が変われば、切断面の状態、材料に残る残留応力、そして積層固定の方式まで変わり、それがそのまま磁気特性や寸法精度の乖離となって現れます。たとえば、少量製作のためにプレス金型を起こすのはコスト高になり、ワイヤー加工では量産品との特性に差が生じるという事実が指摘されています。

またエッチング加工では電磁鋼板の絶縁皮膜を剥がさないと腐食ができないなど、各加工方法にはそれぞれ向き不向きがあります。工法差を前提に設計しなければ「試作で良好だった特性が量産で再現できない」という手戻りは避けられません。

試作段階のデータを量産にそのまま活かすために必要な「一貫体制」の考え方

量産試作とは何か

量産試作とは、量産開始前に試作を行い、設計の最終確認・製造工程の最適化・量産時の品質安定性の確認・製造コストの試算といった観点で検証を行う工程を指します。

代表的な工法には、量産時と同じ成形方法に近い条件で評価できる「試作金型」と、リードタイムが短く設計変更に柔軟な「切削加工」があり、それぞれ得意領域が異なります。試作金型は量産と同条件で品質評価や金型最適化に強い一方、切削加工は1個からの製作にも対応し、設計が流動的な段階でも素早く形状変更ができます。

モーターコアでも、初期段階では自由度の高い工法で形状の妥当性を検証し、設計が固まった段階で量産に近いプレス試作へ移行する二段構えが有効です。

試作〜量産一貫メーカーが実際にやっていること

試作〜量産一貫のメーカーは、単に複数の加工設備を保有しているだけではなく、「量産を見据えて金型を設計する」という一貫した思想で試作段階から関わります。

たとえばミツワ精機製作所は、積層順送金型による月産10,000個以上の量産を得意としつつ、「試作、開発にあたっては、量産を見据えての金型製作をしております」と明言し、金型製作からプレス、2次加工、検査までを自社内で完結する一貫生産体制を敷いています。

また三井ハイテックは、金型設計からスタンピングによる製品化までのトータルサービスを提供し、電動車用駆動モーターから家電用モーターまで幅広く手掛けています。試作評価と量産条件のズレを最小化するには、こうした「量産金型を前提に試作を組む」思想が決定的に重要です。

参照元:株式会社ミツワ精機製作所(https://www.mitsuwaseiki.co.jp/motor-core.html

参照元:株式会社三井ハイテック(https://www.mitsui-high-tec.com/products/mk/

大手も試作内製化・一気通貫体制へ

試作から量産までの一気通貫体制は、部品メーカー各社の戦略的テーマになっています。日刊自動車新聞の報道によれば、ニッパツは従来外部委託していたモーターコアの試作事業を内製化し、国内外の工場に専用ラインを設けて、試作品の金型設計や製造を自社で担えるようにするとしています。

まずは厚木工場で体制を整え、メキシコ・グアナフアト州の拠点でも展開していく方針で、試作から量産までを一気通貫でこなす狙いです。試作内製化はリードタイム短縮とノウハウ蓄積の両面で強みになります。

参照元:日刊自動車新聞(https://www.netdenjd.com/articles/-/303658

一貫体制メーカーの工法パターンを理解する

単発金型による試作→順送金型による量産

モーターコアのプレス加工用金型は、大きく「単発金型(総抜き型)」と「順送金型」に分かれます。

金型単体のコストは、構造がシンプルな単発金型のほうが安価で、複雑な順送金型はその数倍かかる傾向があります。一方で1枚あたりの加工費は単発金型のほうが高いため、量産ロットでは順送金型が有利になります。

外径Φ150以上のモーターコアやブロック転積の試作、イニシャルを抑えたい試作案件では、単発金型による試作プレスを推奨するケースが多く、そこから量産化のタイミングで順送金型へ切り替えるのが定石です。

モーターコアの反りや精度は金型自体の組立精度に大きく依存するため、単発か順送かの違いよりも金型精度そのものが品質を左右します。

参照元:特注シム製造センター.com(株式会社飯島精機)(https://www.shim-manufacturing-center.com/column/単発金型によるモーターコアの試作プレス加工/

ワイヤー試作→プレス量産への移行と接着積層/焼鈍の考え方

ワイヤーカットによる試作は、金型が不要なため金型費用を削減でき、短納期対応が可能という強みがあり、モーターコア試作でも依頼が急増しています。ここで問題となるのが「量産プレスへ移行したときに評価データがそのまま使えるか」という点です。

ワイヤー試作から量産プレスへの移行は対応可能で、試作段階で接着積層による製造を行うケースが多いとされます。加えて焼鈍の扱いも重要で、接着積層では残留応力が発生しないため焼鈍は不要(むしろ熱で接着剤が剥離するリスクがある)、一方プレス加工では残留応力が生じるため薄板では焼鈍が効果的とされます。工法選択と後処理をセットで設計できるパートナーが望ましい姿といえるでしょう。

参照元:特注シム製造センター.com(株式会社飯島精機)(https://www.shim-manufacturing-center.com/column/単発金型によるモーターコアの試作プレス加工/

カシメ積層と接着積層の使い分け(磁気特性への影響)

積層コアの固定方式には、カシメ・レーザ溶接・接着の三方式があり、それぞれ特性が異なります。カシメ方式は打抜きから結束までを金型内で自動化でき、他方式に比べて安価に供給できる一方で、モーター特性は接着方式に一歩譲る面があります。

レーザ溶接方式は金型精度への要求が下がる代わりに設備コストが上がり、小型化・極小モーターに強い工法です。接着方式は加工時間がかかりコスト高になりますが、カシメや溶接に伴う応力が入らないため磁気特性が向上します。

試作〜量産一貫のメーカーへ依頼する際のチェックポイント

試作〜量産一貫を掲げるメーカーに依頼する際は、次の観点を必ず確認することを推奨します。

これらを事前に確認することで、試作評価に投じたリソースが量産で正しく回収される体制を選ぶことが可能です。

まとめ

モーターコアの開発では、試作と量産の工法差が磁気特性・寸法精度の乖離を招くリスクを常に抱えています。

単発金型と順送金型、カシメ積層と接着積層といった工法パターンの違いを理解したうえで、量産を見据えた試作を提案できる一貫体制のメーカーを選ぶことが、開発リードタイム短縮と再現性確保の近道です。

発注前に工法思想・一貫範囲・実績を必ず確認しましょう。

 
小ロット試作から量産まで対応している
モーターコアメーカー
おすすめ3選

「小ロットで依頼したら断られた…」という会社のために、小ロット試作から量産まで対応しているモーターコアメーカーを厳選。なお、品質担保の観点から、国際的な品質マネジメント規格「ISO9001」取得済みの、信頼できる会社のみをピックアップしています。

飯島精機
  • 4つの積層方法から、求められるコストや個数に応じて加工
  • 量産要望にも、工数を減らす金型でコストダウンへつなげる
主な用途
自動車/電気製品/ロボットなど

飯島精機の
公式HPで
製品事例を見る

守谷刃物研究所
  • 加工が難しいアモルファスやパーメンジュールに対応
  • 特殊鋼素材の調達ネットワークで用途に合わせた素材を調達
主な用途
航空機/モータースポーツ/医療機器など

守谷刃物研究所の
公式HPで
製品事例を見る

城山産業
  • 外径1,300㎜までのモーターコアにも対応
  • 顧客の要望に応えるため、新たな設備を積極的に導入
主な用途
自動車/電気製品/ロボットなど

城山産業の
公式HPで
製品事例を見る

※選定基準:Google検索で、「モーターコア」及び「積層コア」と検索した際に表示される31社を調査(2022年4月11日調査時点)。その中から、下記の基準に沿って選出しています。

  • 飯島精機…ISO9001を取得していてかつ試作品対応の会社の中で、コストや個数に合わせて選択できる加工方法が最も豊富(4種類)
  • 守谷刃物研究所…ISO9001を取得していてかつ試作品対応の会社の中で、アモルファスとパーメンジュールの加工事例の掲載が最も多い
  • 城山産業…ISO9001を取得していてかつ試作品対応の会社の中で、最も大きな外径の製品まで対応してくれる
小ロット~量産まで
試作から依頼できる
対応力のある
モーターコアメーカー3選