鉄芯道場
~縁の下の力持ち、モーターコアで拓く未来~

積層する理由は?

モーターコア(積層コア)の積層は、モーター、変圧器などの鉄心で生じる損失(鉄損失)を低減するために行われます。ここでは、積層を行う理由と、鉄損失が発生する理由とその対策についてご紹介します。

モーターコア(積層コア)を積層する理由は?

モーターコアは一般的に、薄い電磁鋼板を一定枚数積み重ねて(積層)作られています。積層構造になっている理由は、鉄損となる渦電流を低減することができるからです。

磁束の透る方向に対して平行に磁束を透し、垂直方向には電気的に絶縁されるため、磁気特性を低下させることなく渦電流を低下させることが可能になるのです。

モーターコア(積層コア)の鉄損失とは?

鉄損失とは、モーター、変圧器などの鉄心で生じる損失のことです。鉄心にかかる電圧の大小に関わらず、鉄心に電圧がかかっている限り発生するため、「無負荷損」とも呼ばれます。

これに対して、電流が流れることで巻線に抵抗が発生した際に発生する損失を「銅損」と言います。どちらも単位はワット(W/kg)で表されます。

鉄損失の発生は電力の無駄となり、かつ振動や発熱を引き起こすため、数値が小さいほど高性能・高効率と捉えられます。

鉄損が発生する理由

鉄損失が発生する原因には「ヒステリシス損」と「渦電流損」があり、それぞれで発生要因が異なります。

ヒステリシス損

ヒステリシス損とは、鉄心の磁界方向、磁束の大きさが変化することで生じるエネルギー損失のことです。これらの変化により、鉄心中の磁気分子の方向や配列が変わり、分子相互間の摩擦損が生じます。

一般的にヒステリシス損は渦電流損より大きいので、鉄損はヒステリシス損の特性が影響すると言っても過言ではありません

対策としては、ケイ素を添加して結晶磁気異方性および磁気ひずみを減少させる、結晶方位を揃える方法などが挙げられます。

渦電流損

渦電流損は、磁場の向きを変えたきに、磁化の変化を妨げるように鋼板内に発生する渦電流による損失のこと。ジュール熱となり外部に逃げていきます。

具体的な低減方法は、ケイ素を添加し電気抵抗を上げること、板厚を薄くして板厚面内の渦電流を流れづらくする、などが挙げられます。薄い鋼板を積層したり、透磁率が高く導電率の低い材料を使用するのが効果的です。

モーターコアの積層方法について

接着積層

積層の部分に接着材を塗り、鋼板と鋼板を固着する方法のことを、接着積層といいます。高機能のモーターや医療機器などで、主に採用されている積層方法です。積層にかかる時間が長くなるため、コストが高くなる場合があります。コストに関していえば、カシメ積層やレーザー溶接積層のほうがコストは抑えられますが、接着積層のほうが丁寧に積層を行えるというメリットがあります。

カシメ積層

2つ以上の部品をカシメでプレス接合する方法のことを、カシメ積層といいます。高い精度でカシメを行わねばならないため、金型にも一定以上の精度が求められます。ただ、プレス以降の過程を部分的に自動化できるため、量産するのに適しており、コストを抑えやすいというメリットがあります。

自動車や医療機器用、ロボットなど、大量生産が必要な分野で多く採用されている積層方法です。

ピンカシメ積層

1枚1枚打ち抜きした製品に複数個所の孔をつくります。そして、積層した板の孔にピンを圧入することで状態を維持する方法のことを、ピンカシメ積層といいます。

ダボカシメ積層

打ち抜き材1枚1枚にダボやハーフカットなどを成形し、押し込んでカシメをする方法のことを、ダボカシメ積層といいます。

なお、ダボカシメ積層は、さらに2種類に分けられます。V字型の凹凸でカシメをして積層するのが「Vダボカシメ」です。一方、丸形状の凹凸でカシメをして積層するのが「丸ダボカシメ」です。

レーザー溶接積層

積層パーツを溶接して接合する方法のことを、レーザー溶接積層といいます。レーザー溶接機を用意する必要があるため、接着積層やカシメ積層などと比べると、コストが多くかかります。

ただ、高い精度が求められるわけではないため、小さな加工品にも対応しやすいというメリットがあります。また、一般的なTIG溶接と異なり、細いビード幅で深く溶け込むので、熱を原因とする歪みの発生を防ぎやすいです。

積層モーターコアの製品事例

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引用元:特注シム製造センター.com
https://www.shim-manufacturing-center.com/column/%E7%A9%8D%E5%B1%A4%E3%82%B3%E3%82%A2%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%81%A8%E7%89%B9%E5%BE%B4%E5%BE%B9%E5%BA%95%E8%A7%A3%E8%AA%AC-2/
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引用元:特注シム製造センター.com
https://www.shim-manufacturing-center.com/column/%E7%A9%8D%E5%B1%A4%E3%82%B3%E3%82%A2%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%81%A8%E7%89%B9%E5%BE%B4%E5%BE%B9%E5%BA%95%E8%A7%A3%E8%AA%AC-2/

モーターコアが積層できる高さはどれくらい?

例を挙げて考えてみましょう。70mm積層モーターコアを作ろうとするのであれば、板厚が0.35mmの場合、200枚ほどのモーターコアを積層することになります。接着積層あるいはピンカシメ積層などのワイヤー加工で製造したほうが、コストを抑えやすくなります。

ただ、ロット数によっては、金型を使用してプレス加工を行うダボ積層の方が、低コストになる場合もあります。

積層モーターコアの試作はどんな製法で作られる?

試作においては一般的に、ワイヤー加工で製造されるケースが多いです。ワイヤー加工であれば、高精度で行えるだけでなく切断面にも差が出ます。そのため、コア特性の向上にもつながります。

また、薄板を積層枚数重ねたものをまとめて加工できるので、積層時にズレが生じにくいところも注目すべき特徴です。さらに、積層治具が不要な製品であれば、ワイヤー加工をした後そのまま溶接できます。接着積層コアなら、接着剤で固着したものに追加工をすることも可能です。

自社の用途に合うメーカーはどこ?
対応力のある
モーターコアメーカー3選

編集チームまとめ

積層を行う理由を簡単にご説明しました。 板を薄くすることで鉄損失が減るため、モーターコアはこの効果を図って積層鋼板構造を採用しています。モーターコアのエネルギー効率向上は重要な課題となっており、技術的なキーの一つとして、積層が採用されているのです。

 
小ロット試作から量産まで対応している
モーターコアメーカー
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飯島精機の
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主な用途
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城山産業
  • 外径1,300㎜までのモーターコアにも対応
  • 顧客の要望に応えるため、新たな設備を積極的に導入
主な用途
自動車/電気製品/ロボットなど

城山産業の
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※選定基準:Google検索で、「モーターコア」及び「積層コア」と検索した際に表示される31社を調査(2022年4月11日調査時点)。その中から、下記の基準に沿って選出しています。

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